本記事は医師監修の下執筆されております。
GLP-1ダイエットは危険で痩せない?安全性に疑問を感じている方へ
2020.04.01
昨今、インスタグラムやTwitterでGLP-1ダイエットの記事を目にする機会が目に見えて増えてきました。
しかし同時に、「GLP-1ダイエットはインスリンが増えるだけで痩せる効果はない!」といった意見もチラホラ。
たしかにGLP-1ダイエットは医療行為であり、誰にでもオススメできるものではありません。
しかし、「GLP-1ダイエットは高い痩身効果が得られる最新医療ダイエットである」というのは事実です。
今回はGLP-1ダイエットに対する反対意見などを例に挙げながら 「GLP-1の安全性と危険性」をテーマにお話ししていきたいと思います。
目次
GLP-1製剤はインスリンが増えるだけで痩せない!は半分間違い
インスリンは血中の糖をエネルギーに変え、余った糖を中性脂肪に合成し体内に蓄える役割があります。
インスリンが増えれば増えるほど脂肪も増えていくので、インスリン分泌が増えるだけではダイエット効果はないというのはたしかに間違っていません。
ある意味正解です。
しかし、GLP-1製剤の効果はインスリン分泌が増えるだけではありません。
GLP-1ダイエットに使われるGLP-1製剤にはインスリン分泌を促す他、 胃腸や脳に働きかけて満腹感をコントロールできる作用や食欲を抑制する効果があるのです(こちらは後程くわしく解説します)。
インスリンの分泌を促しダイエットするのではなく、満腹感を長持ちさせる事で摂取カロリーを減らす、実はコレがGLP-1ダイエットの本質なのです。
ちなみにGLP-1は誰でも体内に存在する生理的ホルモンなのでご安心を。
ダイエットという点において言えば、インスリンの分泌を促す効果は副産物みたいなものだと思ってください。
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GLP-1製剤は低血糖のリスクが高いわけではない
GLP-1製剤は低血糖になるので非常に危険だ。という人がいますがそれは半分間違いです。
血糖値を下げる注射薬は大きく分類して2種類あります。インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬(以下GLP-1製剤)です(血糖値を下げる薬の分類自体は9種類あります)。
インスリン製剤はインスリンそのものを補充するのに対して、GLP-1製剤の方はインスリンを出しやすくする効果があります。
そして、ここが大きなポイントなのですが、GLP-1製剤はインスリン製剤とは違い、血糖値が低くなれば作用しにくくなる効果があり、単独で使えばインスリンの過剰分泌による低血糖のリスクも低い事がわかっています。
勿論リスクが全くのゼロというわけではありません。しかし命を落とすような重篤な低血糖リスクは少ないといって差し支えないでしょう
極端な糖質制限(ケトジェニックダイエット)を行っている場合には注意が必要です。
GLP-1ダイエットは食事制限で痩せるダイエットです
「満腹感を長持ちさせて摂取カロリーを減らす」コレがGLP-1ダイエットの本質です。
食欲を我慢して押さえつけるのではなく「食べたい」という気持ちそのものを抑制してくれるので、今までの食事制限ダイエットよりもストレスなく続けられるのがメリットの一つです。
お酒で飲みに行った後の深夜のラーメン、大盛りごはんのおかわり、チョコレートなどの甘いお菓子、ケーキ、こういった間食をスパッとやめることができるので、ストレスなくダイエットを続けられます。
人によってはかなり食欲がなくなるので、普段から間食の多い人は月の食費が数千円~数万円浮く人も多いです。
普段から間食や過食を繰り返している方にとってはぴったりのダイエットです。
逆に言えば普段から食事制限をしっかりとしていて、間食には目もくれないという人にはGLP-1ダイエットはあまり効果が期待できないかもしれません。
主な副作用(胃腸障害)が現れるのは1%程度
GLP-1の主な副作用には胃のムカつきや吐き気などがあります。
これらは胃腸の動き(蠕動運動)を抑える事によって起きる現象です。いうなれば薬の効きすぎによる現象です。食事量が減り、便の量が減りやすいので便秘気味にもなる方もいらっしゃいます。
こういった副作用が出るのは大体1%~5%程度だと言われています。
殆どの場合1~2週間の内におさまりますが、薬剤の量を調節することで症状を緩和させることができるので、違和感が続いたらなるべく早く病院で相談してください。
ちなみにGLP-1ダイエットは、満腹感が長持ちさせて食欲を無くすことで痩身を狙うダイエットですが、この「食欲減退」も副作用と言えば副作用です。痩せるというのは本来身体によくない事ですからね。
GLP-1の副作用については以下のページで詳しくまとめてありますので、気になる方はご一読下さいませ。
現在GLP-1ダイエットのエビデンスは肥満患者に対してのみ
GLP-1製剤はもともと2型糖尿病の治療薬ですが、糖尿病でない人がGLP-1ダイエットをするとどうなるかを計測した実験があります。
その実験では、患者3731名に毎日3.0mgのGLP-1製剤を投与し体重増減を見るというものでしたが、結果から言うと約9割の患者に8.4±7.3 kgの体重減少が見られました。
実験人数 | 3731名 |
実験内容 | リラグルチド(GLP-1製剤)3.0mgを毎日投与 |
実験期間 | 54週間 |
平均体重 | 106.2±21.4kg |
平均BMI | 38.3±6.4 |
結果 | 8.4±7.3 kg の体重減少 |
BMI30以上の肥満という条件付きですが、GLP-1ダイエットにはダイエット効果があると証明され、海外で実際に抗肥満薬として適応されました。
他ウェブサイトなどで「GLP-1ダイエットの痩身効果には医学的根拠がある!」というのはおそらくこの実験結果の事を指していると思われます。
普通体型や痩せ型の多い日本人にGLP-1ダイエットはどうなの?
太ってる人がGLP-1ダイエットで痩せるのはわかった。
じゃあ普通体型や痩せてる人の多い日本人にはどうなの?と思ってる方が多いと思います。
これについての答えですが、実は日本人に対する科学的根拠は乏しいのが実情です。
というのも日本人の肥満割合は約5%と言われているので、サンプル集めが非常に大変。
先ほど説明したような数千人単位を対象とした実験は難しいのです。こればっかりは仕方のない事だと思います。
先述した実験結果に基づき、普通体型の日本人患者にも同じようにGLP-1製剤を毎日3.0mg投薬してみてはどうか?と思う方もいるかと思いますが、そういうわけにもいきません。
なぜならBMI30以上の大柄な海外の方と、小柄で華奢な体型の多い日本人の代謝機能が同じわけありませんからね。
そのため、日本でのGLP-1製剤投与に必ずルールがあります。
例えばビクトーザと呼ばれるGLP-1製剤は、体型に関係なく最初の投与は0.3mg、そこから最低でも1週間の間隔をあけながら0.3mgずつ投与量を調節、0.6mg、0.9mg、1.2mg、1.5mg、最高でも1.8mgまでしか薬剤の投与ができないという決まりが設けられています。
日本人に対する実験結果がないため、SNS上に否定的な意見が出てしまうのも仕方ないことですが、日本ではこういった安全性の配慮をしながら治療を行っているという点も知っておいて損はないかと思います。
だからこそGLP-1ダイエットは医師の診療が大事
GLP-1ダイエットは自分の判断で決めるのが難しいダイエット法です。
ただ、本ページで何度も言ってる通り、身体への負担が少ないメディカルダイエットとして注目されているのも事実です。
ネットで言われているような、いかがわしいダイエットでは断じてありません。
「自分がGLP-1ダイエットに向いているかどうか」「GLP-1製剤は何を選べばいいのか」「自分の体型の場合は処置してもらえるのか」「美容目的でも大丈夫なの?」などわからないことも多いと思います。
そういった不安の答えは医師が的確にお答えいたしますので、気になる方はまずクリニックに聞いてみてくださいね。
これからもGLP-1や人の食欲に関する正しい情報を発信していきますので、良ければSNSなどでシェア・紹介して頂ければ幸いです。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事のまとめ
- GLP-1はインスリン分泌を促すだけでなく、食欲を抑える効果がある
- 単独で使えば低血糖のリスクは少ない
- 現時点ではBMI30以上の肥満体質の人に対してのみエビデンスが存在
- 普通体型の多い日本人に対しては薬剤の投与量を少なくするなどの配慮がある
- GLP-1ダイエットは医師による診療が最も大切
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