本記事は医師監修の下執筆されております。
食べたくても特定の物しか食べられない!?選択的摂食障害(SED)のお話
2020.08.27
「選択的摂食障害(SED)」という言葉を聞いたことがありますか。
これは、特定の物しか食べられない 摂食障害の一種です。
この病気の人は、食べ物を見て「おいしそう」と思っても、いざ食べようとすると嫌悪感が生じて実際は食べることができません。
世の中には、長い間この病に苦しんでいる人がいます。そこで今回は「選択的摂食障害(SED)」の症状や原因、治療法について紹介します。
「選択的摂食障害(SED)」とは
選択的摂食障害は、特定の食べ物しか食べられない病気です。
好き嫌いや偏食とは全くの別物で、特定の物以外の食べ物に対して強い嫌悪感や恐怖を感じる精神疾患です。
無理に食べると吐き気をもよおしたり、実際に吐いてしまったりといった症状が出ます。
分かりやすく言えば「これは食べれる」と自分で決めたもの以外がのどを通らなくなるわけです。かなりつらいですよね。
さらに選択的摂食障害の人に共通する問題は、食べられないことだけではありません。
皆が普通に食べられるものを食べられない、周りから理解されない、一生SEDと付き合っていかなくてはならないといった苦悩があるのです。
目次
選択的摂食障害(SED)の女性の体験
SEDは日本ではあまり症例が多くないのですが、イギリスのメディア『Cosmopolitan』に掲載されていたSEDに悩む女性の記事では以下のようなエピソードが掲載されています。
- トースト、プレーンビスケット、フライドポテト、卵以外食べられない
- 特定の食べ物は匂いを嗅いだだけで吐き気をもよおす
- 治療を始めるまで自分の症状がなにかわからなかった
- 友人や恋人と食事ができないので社交の場が苦手
- 体力がなくいつも具合が悪い
- 周りに同じ食事を取っている事を隠す為トイレで食事をすることも
女性は現在も家族に支えられながら症状と闘っています。
日本ではあまり症例が見られない選択的摂食障害ですが、この女性のように「自分がなにかの病気かどうかもわからない」という状況の方がいらっしゃると思うので、心当たりがあれば必ず病院へ。
周囲に理解されにくい選択的摂食障害
上記の女性を含め、選択的摂食障害を患う人が抱えている悩みの1つが周囲の人の理解のなさです。
選択的摂食障害が、単なる好き嫌いや食わず嫌いのように扱われ、「一口だけでも食べてみたら」と勧められることも少なくありません。
このような言動は、選択的摂食障害の人にとって大きな精神的負担になります。
自分の近くにSEDの方がいるかもしれないという思いやりも忘れずに。
また当人に関しては、治療には選択的摂食障害のつらさや症状の複雑さを周囲の人が理解することも必要なので、本人が選択的摂食障害のことをしっかり伝える勇気を持つことも大切です。
摂食障害の考えられる原因
摂食障害発症のきっかけは、原因は人それぞれなので一概にコレといったものはありません。
考えられる原因が自分でもわからない人もいます。
ただ、一般的には以下のような理由がSEDを引き起こす可能性があると言われています。
SEDのきっかけになりえる出来事
- 対人関係や人生に悩みを抱えていた
- 極端な痩せ願望や無理なダイエット
- 子供の頃に食にまつわるトラウマを経験した
- DVやネグレクトなど家庭的な問題
- 生まれ持った遺伝的要因
もちろんここに書いてない理由でもSEDになりえます。
ちなみに食べられる食べ物については千差万別ですが、「脂が多い物」「甘味」「炭水化物」である傾向が強そうです。
摂食障害の治療方法
選択的摂食障害の治療には、「外来治療」、「入院治療」、「薬物治療」の3つあり、いずれの場合も、治療に対する患者本人のモチベーションを高める工夫が必要です。
①外来治療(最も一般的)
②入院治療
③薬物治療(非常にまれ)
実はSEDは拒食症や過食症患者との見分け方が難しいので正しい治療をうけていない人も数多くいるようなので、心当たりがあれば一度病院に行ってみてくださいね。
摂食障害は今若者や女性に増えています
選択的摂食障害(SED)は「摂食障害」の1つです。2015年に実施した「病院の受診患者数調査」によると、全国には約2万5000人の摂食障害患者がいると言われています。
10代の発症率も多く、男女比で言えば1対20であり、女性の発症率の方が高いです。
無理なダイエットが引き金になって、摂食障害を発症する人も少なくありません。しかし、摂食障害は生き抜くための本能のようなもの。トラウマや何らかの原因から自分自身を守るために脳が指令を出しているのです。
摂食障害が疑われたら、周りの人への理解を求め、適切な治療を受けましょう。同じ症状の人たちが集う自助グループやフォーラムに参加してみるのもいいかもしれませんね。
コメント