本記事は医師監修の下執筆されております。
GLP-1ダイエットの副作用の原因を解説。副作用が起きにくいGLP-1製剤は?
2020.04.01
GLP-1ダイエットは体内にある痩せホルモン「GLP-1」を摂取する事で、1週間で3kg、1カ月で10kg近く痩せるケースもあります。
元々は第2型糖尿病の治療薬として使われていたものですが、抗肥満薬として諸外国で安全性が認められました。
食事制限や運動も必要なく痩せられる医療ダイエットとして 令和に入ってから人気が高まっています。
しかし、副作用についてはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
あまり知られていませんが、GLP-1ダイエットに使用するGLP-1製剤には種類があり、薬の種類によって副作用の出やすさも変わります。
その人の体質によって副作用の程度は変わりますが、どうせなら副作用のリスクがなるべく少ない薬剤を選びたいものですよね?
というわけで今回はGLP-1ダイエットの副作用について丁寧に解説していきます
目次
GLP-1の主な副作用=胃腸障害
GLP-1ダイエットによる副作用は主に「吐き気」「胃のムカつき」「下痢」「便秘」といった胃腸障害です。
GLP-1でよくある副作用
- 軽い吐き気
- 胃のムカつき
- 便秘
- まれに下痢
もちろん一切症状が出ない方も多数いらっしゃいます。
副作用を感じる方は最初の1週間目に上記のような症状が出ることが多いです。大抵の場合、数週間もすれば薬が身体に慣れて副作用は収まっていきます。
バイオインフォマティクス研究用のデータベース 「KEGG」によると便秘や悪心を感じるのは約5%、食欲減退を感じるのは1%~5%未満とされています
なぜこのような副作用が起こるのか、それはGLP-1ダイエットの本質である「満腹感を長続きさせる」効果と大きな関係があります。
目次
GLP-1で副作用の原因は薬剤の効きすぎがほとんど
GLP-1の効果として知られているものとしては以下のようなものがあります。
GLP-1の効果
- 脳に作用して満腹中枢を抑える
- 満腹感を長続きさせて食欲を抑える
- 脂肪の分解を促進する
これらをふまえて申し上げますと、GLP-1ダイエットは「胃の排泄速度をゆっくりにすることで満腹感を長持ちし、ストレス無く痩せることができるダイエット」と言い換える事ができます。
胃の動きを穏やかに⇒満腹感が長続き⇒間食いらず⇒摂取カロリー減る⇒痩せる、がGLP-1ダイエットの本質です。
しかし、この「胃の蠕動運動を抑える」効果が効きすぎると、身体が異変を感じて「なんか胃がムカムカする」「なんかお腹が気持ち悪い」といった副作用がでてくるのです。
つまり、胃腸障害は薬の効きすぎが原因といっても差し支えありません。
大抵は1~2週間もすれば収まりますが、薬剤量を調節することでも症状が緩和することもありますのでかかりつけのお医者さんに相談してみましょう。
便秘も満腹感が継続し食欲が減退したことで、食事量が減った、その結果、便の量も減った、というケースがほとんどですね。クリニックによっては便秘解消のお薬を合わせて処方してくれる所もあります。
低血糖や急性膵炎などの関連性は見られないとの結論も
低血糖とは血液中のブドウ糖の値が低くなってる状態で、ふるえやめまい、意識障害が起きる可能性があります。
GLP-1はもともと2型糖尿病の治療薬とお話しましたので、低血糖や急性膵炎などのリスクを心配される方も多いかと思います。
しかし、GLP-1製剤は血糖値が高い時にだけインスリンが分泌するように作用するだけで、血糖値が低い時には効きにくくなるので低血糖リスクはとても低いと言われています。
「急性膵炎」に関して、2型糖尿病患者153万人を対象にした実験で、インクレチン薬で急性膵炎リスクとの関連性は見られないという結果もあります。
勿論100%安全だというつもりは毛頭ございません。
重大な副作用のリスクとして低血糖や急性膵炎は可能性としてはありえるでしょうし、GLP-1の投与で胃腸障害などが出た場合は急性膵炎のリスクを考慮し慎重に対処する必要があります
ただし、GLP-1ダイエットの効果と安全性はお墨付きで、2014年にアメリカ、翌年はヨーロッパ各国、現在は韓国でも承認されている医療ダイエットだというのも事実です。
どんな薬にも副作用はありますし、それが怖ければ手を出さなければいいだけです。
おそらくこれらの誤解はGLP-1製剤をインスリン注射と混同した方の勘違いから始まっていると思いますが、GLP-1ダイエットは糖尿病治療とは異なります。GLP-1とインスリンは全くの別物なので過度な心配はご無用です。
ただし、極端な糖質制限をしている方は要注意
GLP-1製剤は低血糖のリスクは低いとお話しましたが、極端な糖質制限(ケトジェニックダイエット)をしている場合は注意が必要です。
ケトジェニックダイエットとはいわゆる「炭水化物抜きダイエット」のこと。食事をタンパク質と脂肪を主にして活動エネルギーを糖質(炭水化物)からケトン体に切り替え、筋肉量を減らさずに体脂肪を燃焼させるダイエット方法です。
文字だけ見ると理想的なダイエットに見えますが、やってみると意外ときつい。2018年頃に日本でも大流行したのでやったことある人も多いと思いますが、とにかく最初の食欲を抑えるのが大変!!
私は白米の誘惑に耐え切れず、1カ月で挫折してしまいました。
で、なぜ糖質制限してると危険なのかと言いますと、過去にインスリン注射によって糖尿病の治療をしていた患者さんがGLP-1に薬を変更したことで「ケトアシドーシス」という病状を引き起こし亡くなったという症例があるんですよ。
ケトアシドーシスとは脂肪の分解によって生じたケトン体が異常増加することで悪心や嘔吐、腹痛、昏睡、最悪の場合死にいたる症状です。
今回はあくまで「糖尿病患者さん」が「インスリン投与からGLP-1への切り替え」という条件で起きた事例ですが、糖尿病でなくとも極端なケトジェニックダイエットをしている人に安易な処方をするのは得策ではないと考えます。
副作用の起きにくいGLP-1製剤はある?
現在日本のクリニックでよく見かけるGLP-1製剤は主に3種類あります。オゼンピック(セマグルチド)、ビクトーザ(リラグルチド)、トリルシティ(デュラグルチド)です。
クリニックでよく見るGLP-1製剤
- オゼンピック(セマグルチド)
- ビクトーザ(リラグルチド)
- トリルシティ(デュラグルチド)
オゼンピックは週1回の投与、ビクトーザとトリルシティは毎日の投与で使うお薬です。
副作用はその人の代謝機能や心身の状態にも左右されるので、必ず医師の診断を仰いで決めてほしいという前提の下、お話いたしますが、副作用リスクが少ないのは毎日同じ時間に投与するタイプのGLP-1製剤です。
週に1回の自己注射で済むオゼンピック(セマグルチド)は高い効果(と値段)の反面、薬剤による副作用が強いケースもあるからです。
となると、ビクトーザ(リラグルチド)かトリルシティ(デュラグルチド)のどちらかという話になりますが、そもそも海外で抗肥満薬として認められているGLP-1製剤はリラグルチドのみなので、ビクトーザ(リラグルチド)を選んでおくのが適当かと思われます。
安易な自己判断はせず、まずは相談を
何度も言いますが、GLP-1ダイエットは医療ダイエットなので、絶対に自己判断せず、必ず医師の診察の下判断するようお願いします。
ただ「自分がGLP-1ダイエットに向いているかどうか」「GLP-1製剤は何を選べばいいのか」「自分の体型の場合は処置してもらえるのか」「美容目的でも大丈夫なの?」 と不安になる方も多いと思います。
そういった不安の答えは私たち医師が的確にお答えいたしますので、気になる方はまずクリニックに聞いてみてくださいね。
これからもGLP-1や人の食欲に関する正しい情報を発信していきますので、良ければSNSなどでシェア・紹介して頂ければ幸いです。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
本記事のまとめ
- GLP-1ダイエットの主な副作用は胃腸障害
- 副作用の原因は薬剤の効きすぎがほとんど
- 低血糖や急性膵炎リスクのエビデンスは無し
- 極端な低糖質ダイエットをしている人は注意
- ビクトーザおすすめです
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